イタチ・ネズミ・その他の害獣の生態と被害

民家に侵入する害獣たち

最近は住宅の構造や空調設備、断熱材など性能向上により私たちが住みやすい環境が整ってきました。それに伴い動物たちもより繁殖しやすい場所をもとめて民家の屋根裏などに侵入し「ねぐら」や「子育て場所」をする家屋侵入被害が増え害獣化しています。どんな害獣が家の中に侵入し、家屋や人にどのような被害を与えるのか。害獣別にご覧ください。

イタチやその他害獣の被害

  1. 騒音被害

    イタチをはじめとする害獣の多くは夜活動することが多いため、人が寝静まった深夜や朝方に天井裏や壁の中をバタバタ走り回ります。その行動による安眠妨害や精神的なストレスでノイローゼになる方も少なくありません。

  2. 糞尿による悪臭と天井板のシミや破損

    ほとんどの害獣は半径数キロ以内の民家の屋根裏を「ねぐら」にして転々とわたりあるきます。彼らはねぐらとなる天井裏に糞尿をしていくため、そこから悪臭被害が発生したり、同じ場所にするマーキング行為によって天井板のあちらこちらにシミができ、ひどい場合は破損することもあります。

  3. 断熱材を荒らす。

    天井裏や床下などに敷いてある断熱材(グラスウール素材)に穴をあけたり、ほぐしたりして害獣がねぐらにするため、ひどく汚れ、臭いや害虫の温床になったり、断熱効果が一部無くなります。

  4. ノミ・ダニその他感染症の媒介

    いろんな場所をわたりあるく害獣の体や、食べるために持ち込んだ小動物にはダニやノミなどが寄生しています。天井裏など害獣が家屋侵入を繰り返すと室内にも広がり繁殖、発疹や食中毒など直接被害を及ぼすほかに、病気を持っている害獣から蚊やノミ、ダニなど介して間接的に人にうつる「人と動物の共通感染症」(狂犬病・ペスト・Q熱・鳥インフルエンザなど)の原因となります。

  5. 子育てによる長期間の住みつき

    初春から夏にかけてはイタチなど害獣たちが暖かで外敵から子供を守ったりするのに適している民家の天井裏で出産、子育てをすることが多くなります。それぞれ期間には少々差はありますが2~3か月の間、住みつきますので長期間にわたり毎日、足音や子供の鳴き声による騒音、天井裏が汚れや臭いなどの被害が続き急激に拡大します。

  6. ウジやハエの発生

    害獣は小動物や果実などを食べますが、安全性確保のために天井裏などに持ち帰り食べる習性があります。彼らが食べ残した小動物の死骸や残飯などが天井裏に放置されますので、ウジやハエ、ダニ発生の原因となります。

シベリアイタチ

食肉目イタチ科 学名【Mustela sibirica】(大陸共通種)

日本には4種のイタチ(Mustela)が分布しています。このうち二ホンイタチ(Mustela itatsi)のみが日本固有種で全国に分布、その他の2種よりもずっと小さい大陸共通種のイイズナ(Mustela nivalis)とオコジョは(Mustela erminea)東日本に、近年、家屋侵入被害をもたらし社会問題となっている外来種のシベリアイタチ(Mustela sibirica)[通称:チョウセンイタチ]は西日本に限られ分布しています。分布が重なる西日本ではシベリアイタチ[チョウセンイタチ]が二ホンイタチを「圧迫」し平野部から姿を消しつつあるという説がありますが、それは「人間による環境破壊」が主因ではないかとアスワット顧問・渡辺茂樹は異論を唱えています。

イタチの画像

形態

  • 頭胴長(体の長さ):25~38cm
  • 尾長(尾っぽの長さ):13~21cm
  • 体重(体の重さ):220~1040g

オスの体重はメスの2倍近くあり、繁殖の時期など一緒にいると親子に見間違えるほどの差があります。

分布

【本州西・四国・九州・対馬】
自然分布は対馬のみで昭和初期に大陸から西日本に移入して分布を広げましたが、現在その勢いは止まり、現時点での東限は長野系の佐久地方とされています。

生態

  • 【交尾期】3~6月初
  • 【妊娠期間】33~37日
  • 【出産期】4~7月末
  • 【産子数】5頭前後

基本的にシベリアイタチは単独生活で(子育て時期を除く)低地や平野部に広く分布、直径約1km内に「ねぐら」を数か所使い分け転々としています。日本への侵入当初、寒さに弱いシベリアイタチは擁壁の水抜き穴の中や側溝の雨水管、廃墟などを「ねぐら」としていました。しかし、より暖かい「ねぐら」を求めて近年、クマネズミやコウモリなどを追って民家に侵入、民家の天井裏や床下に使用している断熱材を「ねぐら」「子育て場所」として利用することによる騒音・糞尿被害が西日本各地で社会問題となっています。都会ではクマネズミを主に食べ、その他にコウモリやヤモリ、トカゲ、ザリガニ、魚、昆虫、甲殻類など雑食性が強いため、最近ではゴミ箱に捨てられている唐揚げやパン、ソーセージなども食べ、都会でも繁殖できる順応性の高い動物だといえます。イタチは同じところに排泄するため、ため糞状になることが多く、その糞の形状は両端が習字の筆のように先が細く、ねじれていていることが多く独特の強いニオイを発します。交尾は年に1回、4~7月末に4~6頭出産し基本的にメスのみが育児を行います。寿命はよく解っていないが、たぶん基本的に3年程度、生活パターンは夜行性と言われていますが、最近の調査によると夜行性、昼行性は場所にかなり影響されるという説もあります。

被害の特徴

  • 3cm以上の穴や隙間、木登りのほか泳ぎも得意なので雨水管からも侵入侵。
  • 体臭や糞尿から発せられる臭いが強烈で部屋の中まで匂う。
  • 小動物を持ち込んで食べることが多いためウジ、ハエの発生被害が多い。
  • 雑食性ですが小動物を好み、農作物被害は少ない。
  • 西日本では家屋侵入する害獣の8割を占め(ネズミは除く)、東日本には分布しない。

シベリアイタチの年間生活史

テン(二ホンテン)

食肉目イタチ科 学名【Martes melampus】(日本固有種)

日本には日本列島に広く分布する日本固有種の二ホンテン(Martes melampus)と、北海道に分布するクロテン(亜種・エゾクロテン)の2種のテン属がいます。二ホンテン(以下:テン)の中には寒冷地に分布し、全身冬毛で鮮やかな黄色に覆われる個体をキテン、夏冬あまり毛色が変わらないくすんだ褐色の個体はスステンと呼び区別(亜種ではない)されています。テンは民家の天井裏で繁殖する事例が増え、害獣化していますが、北海道ではエゾクロテンの民家侵入の事例はあまり知られておらず、国内外来種の二ホンテンによる圧迫を主張する研究者もいます。

テンの画像

形態

  • 頭胴長(体の長さ):41~49cm
  • 尾長(尾っぽの長さ):17~23cm
  • 体重(体の重さ):800~1900g

分布

【北海道・本州・四国・九州・対馬・佐渡】
テンは本州、四国、九州に広く自然分布し、北海道、佐渡島には駆除や飼育目的に人為的に導入されたものが野生化して広がりました。

生態

  • 【交尾期】7~8月
  • 【妊娠期間】270~285日 
  • 【実質妊娠期間】30日(着床遅延)
  • 【出産期】4~5月
  • 【産子数】3頭前後

山にも生息していますが、近年は住宅街でも頻繁に見かけるようになりました。夜行性で木登りが得意、雑食性で野ネズミや昆虫、モグラ、小鳥などとともに、秋から春にかけては柿やアケビ、ザクロ、キイチゴなど果実もよく食べるようです。樹洞、岩の割れ目、などを利用してねぐらにし、交尾は前年の7~8月に終えたあと受精した卵は翌年の4~5月に着床し、そして3頭前後の子供が産まれます。近年里山の住宅化が進んでいるため、里山から山際に建てられた民家の天井裏をねぐらや子育て場所にすることが増え、テンの害獣被害が急増しています。テンは一般的に認知度が低くその存在を知られていないことが多いため、被害にあわれている方や庭先などで見かけても、イタチと間違えている方々も多くいます。山際や里山などでの害獣被害に遭われている場合テンの可能性もあります。

被害の特徴

  • 木登りが得意で体が大きいため民家への侵入は屋根の重なり部に空いた5cm以上の隙間など屋根上からの侵入が多い。
  • 糞の量はイタチの比ではなく大量にするがイタチの様な強烈なニオイはない。
  • 季節によっては柿やミカンなども被害も多少ある。

アライグマ

食肉目アライグマ科 学名【Procyon lotor】(外来種)(特定外来生物)

北アメリカ原産で、もともと日本には生息しなかったのですが1960年代以降に飼育施設からの逃亡、ペットとして輸入後、逃亡・放棄されたものが各地で野生化しました。繁殖力が強く、ゴミ漁りを行なうなど食べ物を都会でも確保することで都会にうまく適応、現在では全都道府県に分布するまでになりました。噛みつきなどの危害やアライグマが媒介するアライグマ回虫症、狂犬病、Q熱などの感染症など、農作物の被害、生態系への影響なども心配されるため、2005年特定外来生物に指定されています。

アライグマの画像

形態

  • 頭胴長(体の長さ):41~60cm
  • 尾長(尾っぽの長さ):20~41cm
  • 体重(体の重さ):6kg~10kg

分布

【北海道・本州・四国・九州】
本州は1962年に愛知県の飼育施設から、北海道は1979年に飼育施設から逃亡したのち各地で爆発的に繁殖が広まって現在に至る。

生態

  • 【交尾期】2~3月
  • 【妊娠期間】63日
  • 【出産期】4~6月
  • 【産子数】4頭前後

北米原産の意図的な外来種で日本全国に分布が広まり野生化、定着しました。外見はタヌキと見間違われることがありますが、尾の縞模様で区別できます。交尾は年に1回、2~3月、4~6月に3~4頭の子供を産みメスが子育てをし10月頃には子供は独立、親の行動圏から完全に離れます。木登りが得意で、平野部を中心に森林や公園、農耕地、市街地など広く生息します。雑食性で前足、後足とも人間のように細長い5本指を器用に使い、トウモロコシやスイカなど農作物を食べるほか、魚、昆虫、爬虫類、人間の残飯などをゴミ箱の中から漁り食べるなど多様な食性です。原産の北アメリカでは樹洞を利用して子育てをしますが、日本では大きな木の樹洞が少ないため、お寺や神社、民家の屋根裏や床下、物置などを利用してねぐらや子育てをしていることが多く、柱など重要文化財の破損、騒音・糞尿被害などが多発しています

被害の特徴

  • 木登りが得意で体が大きいため民家への侵入は屋根の重なり部に空いた5cm以上の隙間など屋根上からの侵入が多い。
  • 糞尿被害も大きいが体が大きいため天井裏の断熱材を荒らし方がひどい。
  • 体重が他の害獣より比較的重いため、糞や尿で天井板が弱くなっている場合は踏み破くこともある。
  • 強い力と手先が器用なので、弱くなった外壁や板などをはがして侵入する場合もある。

ハクビシン

食肉目ジャコウネコ科 学名【Paguma larvata】(外来種)

東南アジア原産の外来種。移入経路が不明でしたが最近のDNA解析で台湾に分布するものが日本に定着したと考えられています。平地から山地まで広く分布していて最近は果実園のミカンやサクランボ、ブドウなど農作物被害が深刻化しています。和名の由来通り外見は額から鼻にかけて白線があり、大きな丸い目、長い尾が特徴的なので他の動物と見間違うことは少ない。

ハクビシンの画像

形態

  • 頭胴長(体の長さ):47~54cm
  • 尾長(尾っぽの長さ):37~43cm
  • 体重(体の重さ):3.5~4.2kg

分布

【北海道・本州・四国・九州】
本州に1940年代、静岡県のミカン農園で食害が多数確認されたのをきっかけとして少しずつ知られるようになりました。2003年SARS騒動で一般的に知られるようになりましたが、その時にはすでに広く全国に分布しており現在に至っています。

生態

  • 【交尾期】1~10月
  • 【妊娠期間】51~59日
  • 【出産期】3~12月
  • 【産子数】4頭前後

木登りが巧みで、昼間は樹洞や民家の床下や天井裏に潜んで夜活動することが多い。性質は警戒心が強く臆病。1月から10月まで長い交尾期間で約2か月弱の妊娠期間の後、子供を4頭前後出産、最近は他の害獣同様、民家の天井裏で子育てをすることが多く問題になっています。普段は民家の天井裏樹洞などのねぐらを数か所使い分け、転々と移動しながら暮らしています。雑食性で昆虫、鳥の卵などを食べますが、甘いものも大好きでスイカ、ミカン、ビワ、カキ、ブドウ、イチジクなど果実を好んで食べます。特にミカンやスダチなど柑橘系果実を食べた糞は黄色味がかり柔らかで、食べた果実の種多く含まれる特徴から「納豆フン」と呼ばれ、時々その糞に人間の髪の毛に似た「ヒゲカビ」が繁殖していることもあります。民家には庭木伝いや縦樋を垂直につたって登り、屋根の重なりの隙間や入母屋の両隅の穴から屋根裏に侵入することが多くみられます。

被害の特徴

  • 木登りが得意で体が大きいため民家への侵入は屋根の重なり部に空いた5cm以上の隙間など屋根上からの侵入が多い。
  • 体も比較的大きく水分量の多い果実を多く食べるため、ため糞場の天井板のシミや傷みが他の害獣よりも急速に起きることが多い。
  • 体重が重いため、糞や尿で天井板が弱くなっている場合は踏み破くこともある。
  • 糞のニオイは甘く生臭い独特。

クマネズミ

齧歯目ネズミ科 学名【Rattus rattus

南アジア原産で世界中に広く分布、日本では全国に分布しています。寒さや湿気を好まず、木登りが得意なクマネズミは、高度成長期の高層ビルラッシュにより室温が調整され快適なビル内を電気配線や配管を伝って上下階を縦横無尽に行き来するようになり爆発的に繁殖、現在に至るまでドブネズミに代わって全国に数を増やし続けています。

クマネズミの画像

形態

  • 頭胴長(体の長さ):150~175mm
  • 尾長(尾っぽの長さ):155~190mm
  • 体重(体の重さ):90~165g

分布

【全国】
2世紀頃から朝鮮半島との貿易船に乗って移入してきたと言われ、ドブネズミより古くから日本に定着しています

生態

  • 【交尾期】1年中
  • 【妊娠期間】21~24日
  • 【出産期】1年中
  • 【産子数】6頭前後

昔から民家やビルなど人間生活に密着して暮らす大型家ネズミ。南アジア原産であることから寒さに弱いため一年中暖かい空調管理されたビルの天井裏や断熱材の敷かれた民家屋根裏に水道管や電気配線などを利用して高所にでも移動、集団で住み着きます。繁殖は年中で21~24日の妊娠期間を経て、子供を6頭前後産みます。その後、約3か月で成獣となり子供を産むことができ、「ネズミ算」と言われるような強い繁殖力を持ちます。食性は種子や穀物類、果実などを好むため民家や飲食店ではお米、パン粉、小麦粉などの食害や、カーネーションなど好みの花を食べることもあります。ネズミ科は、前歯が急速に伸び続けるため少し硬めの物をかじることで前歯を削り保っています。そのため繁殖がある民家では建具や石鹸、天井裏の電線の被覆などをかじることから漏電火災などの被害が心配されています。その他、イエダニの媒介もととなるため、人へうつされると猛烈なかゆみを伴う発疹がおこる可能性もあります。

被害の特徴

  • 繁殖力に優れているためクマネズミが増えるとイエダニが発生、人への被害が出る。
  • 天井裏で電線をかじり、断線、漏電火災の被害が起こる可能性がある。
  • 室内の小さな隙間や建築材、建具などをかじって侵入、家にある食品を食べる。
  • 室内侵入がある場合、人畜共通の感染症を持ち込む恐れもある。

その他、日本の家ネズミには「ドブネズミ」「ハツカネズミ」が存在しますが、ほとんどネズミの家屋侵入被害は『クマネズミ』であるためここでは省略させて頂きます。

無料でお見積もりをします。